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十数年ぶりに漫画熱が復活した昭和生まれ。主にドラマと漫画のネタバレありのスカスカな感想をたれ流すブログです。

ドラマ「チェルノブイリ」感想 傑作エンタメだった

 ※ネタバレ感想

 

ものすごいドラマを観てしまいました。海外のシリーズドラマはとにかく長いので、気軽に手を出しにくいのですか、「チェルノブイリ」はたったの5話。評判も良いし観てみるか…と1話流し始めたら止まらなくなってしまいあっという間に完走しました。

 

史実がベースでこんな惨劇が描かれている作品に対してエンタメという言葉を使っていいのかとふと思うんですけど、紛れもない傑作エンタメに仕上がっていました。史実を元に作られた映像作品、自分が割と最近観た範囲だと「ハドソン川の奇跡」、韓国映画「タクシー運転手」なんかがパッと頭に浮かんだんですが、どの作品も人間ドラマに見入ってしまいました。史実通りに話が進めばいいんだったらじゃあドキュメンタリー見るわいってなるし、その時どんな人達が何を思ってどう動いたかが丁寧に描かれていて、きっとこういう人がいたんだろうというと想像します。

 

チェルノブイリ原発事故に関しては、私の知っていた全ては事故があって今も立入禁止区域になっているということだけ。何が原因でどれだけの人が亡くなって、そして今も引き上げられなかった遺体や作業していた人達の着ていた服が当時のままなんてことは知らない。

ドラマは原発事故後、調査を行うことになる科学者(本作の主人公)と政府官僚を主軸に進んでいくわけですが、消防士の妻だったり汚染された地域の家畜ペットの殺処分作業に駆り出された青年の苦しみも描かれています。本当に多くの普通の一般人がこの事故で人生変わってしまうわけです。事故を隠そうとする者や楽観視していた輩もいたりで地域の住民たちが避難を始めるのも数日後。混乱やパニックになることなく淡々とバスに乗り込む人達のどれほど人が放射能の恐ろしさを認識していたのか。爆発後にただの火事だと思い込んで外へ出て橋から見物していた近隣住人は後に亡くなるということがラストに明かされます。

 

放射能障害で亡くなった人達は顔も判別出来ず、全身焼けただれていて遺体はコンクリートで埋められていました。もう人の形を成してない大切な家族に最期触れることさえ許されずコンクリートで埋められる、想像するにも耐え難い苦しみです。消防士の妻は妊娠していて、実在のモデルの女性がいます。夫を亡くしその数カ月後に出産した赤ちゃんは4時間後に死んでしまいます。ドラマでは彼女は夫が搬送された病院に無理やり面会に行き付き添うのですが、本当は面会禁止で触るのも駄目だと言われているのにそれを破ってしまいます。この辺はもしかしたら事実とは異なるかもしれないですが、でも当時こっそり病院に潜り込んで看病していた人いたかもしれない、とも思えました。

 

爆発後、次から次へと色んな問題が襲いかかります。被害をこれ以上広めない為に命を落とす可能性が高い地下での作業や屋上での作業に現場で働く人達が駆り出されます。ロボット導入も検討されるも強烈な放射能で機械すらダメになってしまいます。この辺りも裏で体面を保つことを優先する政府上層部に見ていて絶望的な気持ちになります。色んな指示を出す主人公サイドも直球な言葉で言うと「死ぬけど地下に入って大勢の人を救ってほしい。誰か志願する者は?」と言わなければならない苦しみ。そして原因究明の為の調査の過程で圧力や妨害を受けながら途中諦めそうになる主人公。事故の原因は設計の欠陥があった上に色んな要因が重なり合って起きたと分かってくるのですが、もうやりきれない。あの時こうしていたら、と思わずにいられませんでした。ラスト、責任を問われた発電所関係者や、事故後現場作業に入った人や消防士の妻達のその後がテロップで明かされます。この事故に終息は無いのだと思います。制作陣の覚悟と本気に圧倒されたドラマでした。

 

 

 

 

#1 『1時23分45秒』

#1 『1時23分45秒』

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