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十数年ぶりに漫画熱が復活した昭和生まれ。主にドラマと漫画のネタバレありのスカスカな感想をたれ流すブログです。

映画「バーニング 劇場版」感想 ※ラストのネタバレあり

 

※ラストのネタバレしてます

 

 

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ドラマ版の感想 

 

 

先日こういうラストにはならんだろうと何となく思って軽率に書いた妄想がスクリーンに映りやりきれない気持ちになりました。世の中はなぜこんなに弱者に優しくないのか。この不平等さをしょうがないで済ませていいのかな、とそんなことを感じる映画でした。格差、虚無、絶望、そして格差、格差…

 

劇場版の感想です。

 

個人的には思っていた以上にはっきり明示されていたラストが意外と感じたし、ドラマでは分からないと思った部分が私なりに咀嚼できたので劇場版観てよかったです。

鑑賞前この記事の内容を頭に入れておいたのも大きかったかもしれません。

 

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ヘミ

ヘミは、劇場版観て一見ちゃんとバイトしながら旅行もできるぐらいの生活を送る不思議な魅力の女の子に見えるんですけど、実際はギリギリのところで生きているいつ最底辺の生活に落ちてもおかしくなさそうな女の子でした。そしてベンと知り合ってからは彼といることで"ベンと同じ側"にいると錯覚しているような振る舞いに見えてしまいしんどくなりました。ヘミはどう足掻いてもグレートハンガーにはなれない。そして、ヘミがジョンスのことを唯一信頼している人だ云々というのもあくまでベンがそう言っているだけで、本当のところは分からないです。ヘミは借金も抱えていたし、酔った時の"始めからいなかったかのように消えたい"発言、大麻吸った後の踊りと涙に、彼女も誰かが手を差し伸べるべき人だったのに突然社会的に抹消されてしまった存在と思えました。唯一気にかけていたジョンスがあんなことになり、ヘミが死んでいようが、どこかの風俗で生き繋いでいようが、売り飛ばされて外国にいようが誰も知らない、ということが昨今ニュースになる事件諸々にも色々重なりました。

 

ベン

ドラマ含めて3度も観ると、ベンは登場から数分でどこかヤバい奴ということが分かります。初回はこの辺りスルーしてたんですけど、まず車内での母親との電話の会話内容が気持ち悪いし、おそらく空港まで友人に迎えに来てもらっていたのにわざわざジョンスのボロトラックに乗り、レストラン後に自分の高級車を最後見せつけるようにして去っていくあたりでこの確信犯が!!となりました。ベンはつまらないから面白いことをしている、ただそれだけ。ヘミとジョンスを金持ち軍団に紹介したり自宅に招待したり、ジョンスの家に押しかけたり、全て"面白いから"で説明できるような言動に、絶対に埋まらない価値観の違いを見せつけられた感がありジョンス目線で観てるとキツすぎました。ベンにとってヘミもジョンスも映画や買い物といった娯楽と一緒で、楽しんで飽きたら捨てる、それだけの存在なのだと。ヘミの後釜の女の子に化粧するシーンもおもちゃで遊ぶのと同じ感覚で特に意味はなかったんだなと私の中で腑に落ちました。

 

ジョンス

唐突にラストですけど、ドラマ版の後の展開はジョンスがベンのストーカー化し、最後ベンを刺して車ごと燃やします。着ていた衣服を全て脱ぎ捨て死体と燃やし、裸でボロトラックに乗り込み映画は終わります。ストーカーとなる引き金となったのはヘミの失踪ですけど、それに追い打ちをかけるように父親の実刑判決と昔家出した母親からの金の催促というダブルパンチをくらい、(´Д`)状態の顔で観てました。やるせなくなったのは、どんな親の元に生まれるかで運命がある程度決まってしまうということもこれでもかってぐらい描写されていてやっぱり最近の日本だと児童虐待事件が嫌でも脳裏に浮かびます。

ヘミの為というよりこの立て続けに起きる不幸を"何か"のせいにしないとやってられなったジョンスに対してコツコツバイトして自力で抜け出せよ!と思う人もいるかもしれないですが、私はそんな風にはどうしても思えませんでした。

 

井戸と猫と時計

ジョンスは失踪後のヘミを探す過程で"ヘミが子どもの頃落ちた井戸"が本当に存在していたのかを色んな人に聞いて確認します。近所の住人もヘミの家族もみんなそんなものは無かった、と。しかし、田舎を出てったジョンスの母親はあったと発言。ここでベンが言う"近すぎて見逃すことがある"って言葉が浮かびました。住人が気づかなくて外に出てった人間の記憶には残っているのも人の利用価値の無いものに対する認識がどれだけ曖昧なのかってことも、いや別に真実なんてこの際どうでも良くて。ジョンスは母親の発言でヘミは本当のことを言っていたと信じたし、ベンのところにいた猫はボイルだと信じたし、あのピンクのダサ時計がベンがヘミから奪ったものだと信じたし、ジョンスから見たら全てベンがヘミを殺したと思い込むには十分でした、真実は分からないのに。

 

 

この世の中どこかおかしいと感じるあの何とも言えない違和感が、ベンという存在を通して突きつけられ、ナイフを突きつけるしかなかったジョンスが作中でベンが触れる"雨"と同じように思えてなりませんでした。

 

 

ダラダラ感想書きましたが、とりあえず一番言いたいのは、あの原作をこんなアレンジしたの、すごくない!?てことです。韓国映画面白いの多くてまた色々手を出したいなと思いました。