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十数年ぶりに漫画熱が復活した昭和生まれ。主にドラマと漫画のネタバレありのスカスカな感想をたれ流すブログです。

映画「ウインド・リバー」感想 どん底にいるのはお前のせいと言い切れるのか。

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MCUホークアイとスカーレット・ウィッチが共演してます。

 

少女ばかりが殺される土地

キャッチコピーだけでレイプ殺人を想像しましたが…後々見えてくる先住民保留地の現実が重くのしかかる映画でした。自然環境が非常に厳しい、主人公コリーの息子がまだ幼いながらも銃を持つことが日常化している(単にハンターの息子だから?)、そういう土地なんですよ、と序盤に頭に叩き込まれ、少女が死体で発見されてからのサスペンス展開、迫力ある銃撃戦も見応えあって2時間以内という集中しやすい長さも良かったです。(最近の映画長すぎるの多いんだよな…)

 

 

コリーが被害者の少女の兄(グレて家出中)に"大学や軍じゃなく、この生き方を選んだ。お前の選択だ"みたいなこと言ってて、キッツいセリフだなあと。そして先住民ではないコナーに言わせるところが効いてます。ネイティブアメリカン達は植民者達に追いやられ辺境の厳しい地に強制移住させられた。産業が無いから職もない、娯楽もない、何の希望も見出せない中で犯罪に走る人が増えそれが当たり前の状態になっていく… 

 

 

兄の言った

"怒りが込み上げて世界が敵に見える"

 

この怒りが力のない少女達に向けられるという現実。真相調べようにも警察の手が圧倒的に足りなく現地の自治にある程度任されているという部分も興味深かったです。そして大して調べられずに忘れられていく事件が山ほどあるということ。というか死体が見つかった場合はまだいい方で、あの雪山で埋もれて発見されていないただの失踪者とされている人も大勢いるんだろうなと伺えます。

 

この現状をフェアじゃない世界だけどどん底にいるのはお前個人のせいと言い切っていいのか?という。犯人達のやったことはクソという言葉では足りないぐらいのクソであることは大前提ですが。あの兄貴がそのまま妹を殺した奴らと同じ道に進むのか、脱出できるのか、その道はどこで別れるのかにしても行政、国は助けてくれないという現実が重すぎます。

 

被害者のナタリーの恋人マットは悪いやつではなかったっぽいですけど、どう見てもアラフォーぐらいのおっさんが18、9?歳の子と付き合っている図もなかなかキモいなと。ああいう環境にいたら大人の男性に惹かれてしまうのもしょうがないと思うべきか。かろうじて(アメリカでは)成人しているとは言え。マット役のジョン・バーンサル、私が観た出演作品は「ウォーキング・デッド」、「ボーダーライン」ときてこの作品なのですが全部印象悪いしょうもない役ばっかりやんけ最高ちょっと好きになってきました。

 

 

 

話の本筋から少しずれるかもしれませんがちょっと思うところがあった部分がありまして。ものすごく厳しい見方ですけど、コリーの娘が亡くなった時の状況は"フーン…下の子は当時まだ5歳なのに夜に家空けるんだ…"って思っちゃって。まあもしかしたら義理の両親に預けていたのかもしれないですけど、少々モヤっとしてしまいました。悪いのは犯罪者なのに被害者側に自衛意識が足りないんじゃないかと責める風潮があるのは最近の日本で感じますが、この考えは危険だなと思いつつも、絶対に自分だったらやらない(この場合だと幼子残して夜に家を空ける。理由は夫婦二人になりたかったから)ことをやられると複雑な気持ちになってしまいます。

彼の"子どもができたら絶対に目を離すな"はそれだけ犯罪に巻き込まれる可能性が高い土地であることを意味しています。またコリーの話を聞いたジェーンがトイレで、ぜっっっったいに犯人捕まえてやると決心したように見えた表情がとても印象に残りました。ジェーン、新人捜査官にありがちな仕事が出来ない、やる気だけはあるが空回りする、みたいな映画ドラマのあるあるタイプじゃなくストレス感じずに好印象持てるキャラでした。死ななくて良かったよ。。

  

 

本作はたまたま犯人が分かったケースであるものの、何の権利もないコリーが犯人を罰する、そしてそれも公にはならず闇に葬られていくんだなと思わせる内容がまた恐ろしい映画でした。。まあ犯人に対してはざまあとしか思わなかったですけれど。